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【国際サッカー連盟(FIFA)と日本サッカー協会(JFA)の取り組みについて】
[GSA]
FIFAワールドカップ2006ドイツ大会では、「グリーンゴール」という環境コンセプトを取り入れた。これは、あらゆる環境への影響に対し、総合的に対策をとった大会として注目された。
JFAでも、「グリーンサポーター」という取り組みをしている。これは、サポーターがスタジアムを清掃する。また、「リユースカップ」を導入し、会場で使用されるコップを再利用したりと、積極的に環境対策を行っている。
そこで、今回の「グリーンゴール」がどれくらい成果があったのかをお聞きしたい。
[岡田武史 氏(以下、岡田)]
これは、FIFAの取り組みではなく、ドイツのワールドカップ組織委員会が独自で提案して主導し、それをFIFAとドイツ政府がサポートしたものである。サッカーのワールドカップでは、初めて行った取り組みで、今後FIFAに、こういうものを取り入れたらどうだろうかと組織委員会が提案したもの。
主に、会場での水、廃棄物、エネルギー、交通の分野で、それぞれ数値目標を定めて削減に努めた。例えば、節水型トイレの設置、雨水の再利用、ソーラーパワーなどのグリーン電力の導入、会場までの公共交通機関の整備など。
また、「カーボンニュートラル」では、南アフリカやインドの津波被害などへの寄付で、温室効果ガスの排出量を相殺する対策も行なった。
その結果、1つのイベントとしては非常に効果があった。これにより、ドイツのチームも感化され、取り組みも評価されたが、実際に個人の意識にまで広まったか?という問題が残る。アピールが足りなかったという反省点もある。結局、個人個人にまで環境意識が広まったとまでは言い切れなかった。
[GSA]
確かに、会場における保全活動としてはOKだが、個人の生活を変えるほどの効果があったかというと、それは難しい。もちろん意義はあったと思う。 増島さんはどうお考えですか?
[増島みどり 氏(以下、増島)]
記者の立場から言うと、大会中の移動にかかる費用は、対策のお蔭で非常に安く抑えられていてよかった。大会中は、組織委員会から出される紙の量が少なかった。今回、パソコンから各自が必要なものをプリントアウトするという方式がとても効果的だったと思う。また、通常はどのイベントでも、それぞれのメディアに対してパンフレットや観光案内、現地のPRなどが持ちきれないほど入ったメディアキットをもらうのだが、この大会ではそういうものが1つもなかった。これは、私の今までの経験の中で初めての出来事で、素晴らしいと思った。組織委員会が主導をとったことで、せっかくこれだけの環境対策をしておきながら、メディアへのアピールが非常に少なかったように思う。それなりの成果もあったのであれば、これを取り上げた記事がもっと出てもよかったのではないかと思う。
[岡田] 確かに、リユースカップの使用や他の取り組みなどの広報活動が足りなかった。
[GSA] 今回のドイツ大会を見に行ったが、以前、サンパウロでの大会も見に行ったときと比べて、断然クリーンなイメージがあった。スポーツイベントを通じた啓発活動は、難しいところもある。それを踏まえて、特任理事として、これからJリーグでどのような取り組みを考えているのか?
[岡田] 学生時代から環境問題には取り組んでいるが、その辺はどうなのかと川淵さんに聞いたら、「環境プロジェクト」の特任理事に任命された。具体的にどういう取り組みをしていくかということは、これから決めることになる。もともとサッカーはボール1つあれば世界中のどんな地域でもできるので、そういう特性を活かしたい。
また、Jリーグで、「百年構想」というものがあり、簡単に言うと、地域に根ざしたスポーツクラブをつくっていくものである。スポーツクラブというのは、モノの豊かさを追求するライフスタイルを、心の豊かさに変えていく拠点となる。そして、ライフスタイルを変える拠点と言うのは、本来環境にいいはず。ところが、2,3万の観客を収容したナイターゲームを1回すると、計算方法は色々あるが、杉の木3040本くらいの二酸化炭素量に相当するらしいというデータがあって驚いた。環境負荷をなくすためにはプレーしないことがいいのかもしれないが、サッカーをやることによって、ストレス発散や人との交流が生まれ、みんなの心が健康になるのであれば、やはりスポーツはすばらしいと思う。
では、スポーツを永続的に続けていくのであれば、環境負荷を減らすことを考えていかなければならない。環境省も「チームマイナス6%」の取り組みをしているが、それよりもアスリートからの呼びかけは効果があるので、それをツールとして啓発活動をしていきたい。
また、FIFAは一元管理の世界的組織なので、FIFAが乗り出して世界中のサッカー協会に指令がくれば、早く世界中に広まる可能性がある。
[GSA] 地域スポーツを活性化させることにより、その地域が豊かになっていくと思う。例えば、芝のサッカー場を作れば、それだけでヒートアイランド現象が緩和される。
[増島] 今年大阪で開催された2007世界陸上においても、国際陸上連盟が初めて「グリーンプロジェクト」を実施した。国際陸連もFIFAと同じように、一元管理の組織で、サッカーと陸上という大きな組織がやっと動き出したなという感じがする。スポーツ競技の中で陸上が最も紙を使う競技。各種目の1つ1つに対して、紙が使用されるのが現状。この大会の9日間で記者席に配られた紙が140万枚。その他でもプレスセンターでは大量の紙が使われている。また、毎日、その日の競技日程を記したプログラムが販売されるが、観客10%くらいがそれを購入する。すると、90%分は捨てるということになる。これだけ見ても、1つのスポーツイベントで、紙を減らす、モノを使わないことがどれだけ難しいか分かる。ゴミの分別にしても、大会関係者やボランティアを配置してゴミの完全分別を徹底したが、大阪のゴミ収集は全部まとめているそう。こういったことから、スポーツイベントで環境対策を徹底するためには、大会内部の努力と観客の意識の2つがうまくいかないと、かなり難しいと実感した。だから逆に、スポーツの現場で削減を実施するというよりは、削減する意義というものを広めたほうがいいと思った。
[岡田] 一般の人は、こういった話を理解しているし、環境にいいことしようと思っている人も大勢いる。ただ、結局、今何ができるかを考え、今出来ることから始めていかなければならない。見に来た観客を参加させるには、お金を出してもらうのが一番。例えば、入場料にプラス100円を加算し、この100円が実際にどういう風に使われているかを見せるのがいい。そうすれば、自分がやっているという自覚がうまれる。単に「環境のため」というのでは弱い。本人に参加してもらうには、それぞれに何かを負担してもらい、具体的な活動を行ない、その成果を目に見えるようにすることが大事である。サッカー界での「環境プロジェクト」でも、この点を取り入れたいと思っている。
[増島] 1996年から、国際オリンピック委員会(IOC)が、環境への取り組みをオリンピック憲章に盛り込んで改定した。それ以降は、オリンピックの開催にあたっては、インフラの整備の段階から大会開催に至るまで、様々な環境項目が設定されている。
オリンピックにおいて環境対策を感じたのは、1994年にリレハンメルで開催された冬季五輪だった。この大会は初めての「環境に優しいオリンピック」として、じゃがいものでんぷんを素材とした食器の使用、岩をくりぬいて造られたホッケー場、木製の屋根などが注目された。
[GSA] 大きな大会を開催して環境に取り組むというのは、すごく大変なことのように思うが、サッカー以外のスポーツではどうか?
[岡田] ウィンタースポーツや水のスポーツは、「スキーができなくなる」「泳げなくなる」ということで環境をアピールしやすいが、サッカー場を芝にしても、二酸化炭素の吸収量はほとんどないに等しいので、なかなかアピールできない。そういった意味でも、他のスポーツを含め、すべてのスポーツで受け入れられるような汎用性をもったシステムを考えている。
【スポーツを通じた環境の啓発】
[GSA] GSAでは、「OUR GOAL IS CLEAN AIR」をキーワードに、スポーツ界で言われる「フェアプレー」に加え、「エコプレー」を呼びかけている。スポーツ愛好家が当たり前のように「フェアプレー」「チームプレー」を心がけるのと同じように、普段の生活の中でも環境に配慮した行動を心がけるという意味の「エコプレー」が当然のようになればいいと思っている。すべてのスポーツ愛好家が、「フェアプレー」と「エコプレー」の実践を心がけてほしい。
スポーツを通じた環境啓発活動について、どう思っているか?
[岡田] 二酸化炭素の削減を目標にしているが、企業などに関しては、現状維持か少し削減されてきている。問題は、民の部分で、それぞれの家庭での排出量などは増えてきている。そうなると、民の部分に働きかける啓発活動しかない。結局、スポーツの現場で何をするかということよりも、日頃何をしてもらうかが大切だと思っている。
[増島] 日常生活で考えると、ゴミの分別化が身近になってきているが、スポーツはもちろん、そういった別の分野での取り組みとジョイントすることがいいと思う。そもそも、メディアが一番遅れていて、未だに資源の無駄遣いをしている。記者が啓発されていないのにメディアが一般の人にうったえられない。啓発活動に携わるべきメディアが率先してやらなければならない。
[増島] 今度、北京でIOCで環境会議があり、400名くらいの人が集まり、岡田常任理事もプレゼンをするそうだが、どういう内容を考えているのか?
[GSA] 国連環境計画(UNEP)とGSAが共同でやっている、発展途上国でのスポーツ指導と環境教育のプログラム「ドリームキャンプ」の紹介を行う。また、環境問題は人間の消費文明問題について。消費ということは、都市に集中しているので、そいういった都市に住んでいる人たちに、生活を見直してもらうような提案をしようと思っている。
[増島] しかし、北京で開催するということは、そのものが問題ですよね。環境問題に配慮するといっておきながら、「きれいな空気の中でスポーツを楽しみたいよね」ということがくつがえるかもしれない。北京もあれだけの都市開発をしていて、様々な対策を考えている一方で、成果は出ているとは言え、現実はどうか分からない。
[GSA] テニスの松岡修造さんが北京での大会に出場した際、光化学スモッグの影響で呼吸が苦しくなり、試合を棄権したという話をしている。今回の北京では、逆にそれがメディアに取り上げられ、人々が環境について考えるきっかけになるのではと、ポジティブにとらえたい。
[増島] なかなかポジティブに考えるのは難しい。水の問題一つにしても、汚染された水での競技もある。朝日さん、ビーチスポーツはどうですか?
[朝日] ビーチバレーの会場は、天安門広場の横に砂を入れて会場を作る。
[GSA] FIVBはむしろ、それを歓迎している。会場へのアクセスなどを考えると。
[増島] ある意味、この大会は環境とスポーツの接点を見出すための、象徴的な大会になると思う。
[GSA] サッカー界では、ドイツの後は南アフリカでの大会になるが、ドイツを超える取り組みはできるのか?
[岡田] 環境の分野でと言えば、ドイツは超えられないと思う。申し訳ないが、選手が犠牲になって、全世界に環境問題をアピールするしかない。
【今後の環境への取り組みについて】
[GSA] 地球環境問題は、私たちの消費文明が原因になっていて、持続可能な文明を実現していかなければならないと考えている。これは、消費文明からの脱却しなければならないと思うが、どう思うか?
[岡田] 根本的にいうと、人口が増加すると豊かな生活をする人が増えてくる。そうすれば、いつか行き詰る。本来なら、人口が少ないほうがいいが、そういうわけにもいかない。環境問題を考えるとき、いつも人間が主語になるが、地球全体の歴史を考えたら、これ以上環境が悪いときもあった。結局、人間が住みにくいというだけで、そこでのか諦めるのか?というと、子孫はこれから何代も続いていく。どうせ死ぬのなら、チャレンジし続けたい。チャレンジし続けると、必ず矛盾が生じてくる。しかし、今自分ができることをするしかない。
[GSA] ある詩人の方が、たった4文字で「求めない」と書いていた。物欲があるのが人間だが、求めないと聞くと気が楽になる。多くを求めないことが大切。
[岡田] どこまで求めなければ環境にいいのか?というより、「求めない」と思ったら、できることからやるしかない。目の前にあること、今できることをする。そうしないと、きりがない。
[GSA] 同じお金を使うなら、モノを買うより、人の心や付加価値、よりよいサービスに使う成熟した社会になればいいと思っている。
[増島] いろいろ考えると矛盾を感じるが、本当に、今できることをやるというのが大事だと思う。岡田元監督がドイツに住んでいたころの話を伺ったことがあるが、とても印象に残っている。
[岡田] 以前ドイツに住んでいた頃は、宗教上の理由から、日曜日にはほとんど店が閉まっていた。そういう時に何をするかというと、公園に家族で行って、弁当を食べたり、スポーツや散歩をするしかない。最初は、その生活が物足りなく感じていたが、そいういった生活をしていると、だんだん慣れてきて、穏やかな落ち着きのあるライフスタイルになっていった。しかし、帰国してみると、気持ちにも落ち着きがなくなって、環境の大切さが分かった。
[GSA] ブータンでは、GDPの変わりに、GDH(Gross Domestic Happiness)という指標を使っていると聞いた。持続可能な社会を作るということは、モノの豊かさではなく、人の幸せ度で考えるといいのかなと思った。
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